3つの取り組み
近年、ICTの進歩により建設分野においても、これまで把握困難であった情報が容易に取得できるようになり、全く新しい施工管理手法が実現しつつあります。異業種パートナーとも積極的に連携し、ICTの活用および業務のあり方自体の構造的な変革に取り組むことで、技術力と生産性の向上を目指します。
業務効率化への取り組み
業務プロセスの見直し
工事所の生産性向上を図るため、施工管理におけるICTの積極的導入や工事所業務の最適化に取り組んでいます。
工事所業務の最適化については、業務分担を抜本的に見直し、工事所職員以外による支援が可能な業務は、内勤者の業務やアウトソーシングに集約して効率的に実施するなど、工事所業務を支援する体制の構築を目指しています。

基幹システムおよび周辺システムの見直し
現在、勘定系および人事系の基幹システムの他に多数の周辺システムが存在し、各種システムの関連性が複雑化しています。それを解消すべく、営業支援システムの新設や勘定系および人事系の基幹システムの刷新により、周辺システムを最小限とします。データの分析や活用効率を重視し、社会情勢やICTの変化に適宜対応可能なシステム体系の構築を目指すとともに、業務プロセス自体の効率化を図り、生産性の向上につなげるべく取り組んでいます。

画像認識AIを活用した墜落制止用器具の
フック不使用者自動検知システム
画像認識AIを活用し、墜落制止用器具(安全帯)のフック不使用者を自動検知できるAIモデルを構築しました。本AIモデルは複数現場で収集した6,000件以上の画像データを学習させており、建設現場に設置したカメラ映像から作業員、フック、親綱支柱を検出し、フックが親綱にかかっていないフック不使用状態を自動検知します。※1
鉄骨建方中の建設現場において、本AIモデルを検証した結果、フック不使用者を90%以上の高精度で認識できました。2022年夏頃から日立ソリューションズとの共同開発により、フックの不使用状態が一定時間続いた場合にメールや警報機器で管理者へ通知する機能を加えてシステム化し、2023年から適用を開始します。これにより、管理者がその場にいない時でも遠隔にて作業員のフック不使用を検知することが可能となります。本システムを活用し、墜落転落災害の撲滅を目指します。
- ※1 特許出願済(奥村組、日立ソリューションズ)
BIM活用によるライフサイクルコストの最適化
国土交通省『令和3年度BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(先導事業者型)』へ参画し、BIMモデルとクラウドを活用した維持管理BIMシステムの構築により、ライフサイクルコストの最適化などの効果を確認しました。当社技術研究所の管理棟などで検証を行い、BIMモデルに、修繕・保全での活用に必要な属性情報を付加し、データマイニングを可能としました。特に増改築や大規模修繕工事への対応を重点的に検証し、住み続けられるまちづくりに貢献する取り組みを進めます。
また、管理棟では日々のデマンド監視情報(温度・湿度、太陽光発電量、電力使用量など)をBIMモデルとクラウドを活用した維持管理BIMシステムに集約・蓄積していくことで、建物の保守・保全活動や長期修繕計画の最適なタイミングを把握することが可能となりました。今後は、さらなる検証を進め、お客さまのライフサイクルコストの最適化に活かしていきます。
- ※2 BEMS:ビルエネルギーマネジメントシステムの略称。
室内環境とエネルギー性能の最適化を図るためのビル管理システムのこと。